オブジェクト指向UIデザイン──使いやすいソフトウェアの原理 (WEB+DB PRESS plusシリーズ)
UIまわりの本ですが、こういうボタンはどういう見た目にしよう、のようなスタイル的な話ではなくソフトウェアの設計が主題です。
タイトルに入っている「オブジェクト指向UI(OOUI)」について、特にスマホアプリを普段扱っている人にとってはおそらく慣れた(普段から意識している)指向なのかなと思います。
ただ実際にソフトウェアを設計する際の方法論や実例を学ぶことなく「なんとなく」決めていることが多いと感じています。(自身はそうでした)
この本にはその方法論や実例が多く説明されていたので、気に留めておこうというポイントを中心にメモしておきたいと思います。
使いやすい or 使いづらいと感じる画面(UI)にはどんな特長があるのか、なかなか論理的・客観的に説明するのは難しいですが、技術評論社の記事 動詞ではなく名詞を起点に画面を構成する ~OOUIでソフトウェアを使いやすく~ にも書かれている通り、下記の考え方で設計することであらゆるソフトウェアの構成が整理され使いやすくなります。
タスクではなくオブジェクトを起点に画面を構成する。もっと一般的な言葉を使うと,「動詞(やること)」ではなく,「名詞(もの)」を起点に画面を構成する。たとえば「本を買う」であれば,「買う」ではなく「本」を起点にする。これだけのことです。ごくシンプルですよね。
4章の実践では、こういう要件があるものはどのような考えで作るのかが説明されていますが、本を通してメインで説明されている核は上記です。
5章のワークアウト基礎編では何個かお題があり、これまで説明された内容で自身でアプリケーションデザインをしてみて答え合わせしましょう、という内容です。
6章のワークアウト応用編では既存のタスク指向のアプリケーションをどのように改善すると良いUI(OOUI)になるかを考える設問と答えが掲載されています。
ソシオメディアさんというUI分野で古くから有名な会社に所属する方が書いており、さまざまなプロジェクトを通して得たノウハウが詰まっているように感じました。
ユーザーインターフェースという言葉は「コンピューター画面」などにとどまらず、使う人とその対象をつなぐものすべて。
そもそも扱うべき対象 = オブジェクトが「在る」という前提そのものが、UIの概念なのです。UIははじめから存在論的であり、オブジェクト指向なのです。
オブジェクト指向UIとは、オブジェクトを手掛かりに操作設計されたUIのことです。
オブジェクトとは、アプリケーションが扱う情報 オブジェクトのことであり、ユーザーが操作するときの対象物のことです。
例えば蔵書アプリの場合、最初に表示される画面で
がオブジェクト指向となる。
- オブジェクトを知覚でき直接的に働きかけられる
- オブジェクトは自身の性質と状態を体現する
- オブジェクト選択 → アクション選択の操作順序
- すべてのオブジェクトが互いに協調しながらUIを構成する
CLIのように、動詞を起点として設計された操作モデル。動詞 = やることを指向しているという意味
タスク指向の例としてATMや券売機、自動販売機など。
UXへの注目の高まりによって、ユーザーの体験価値の向上がUIデザインのひとつの重要なゴールとして認識されてきていることも関係しているのではないでしょうか。
体験をデザインするということが、ユーザーの利用手続きをデザインするという意味で捉えられることが多いのです。
モデル、インタラクション、プレゼンテーションのレイヤーに分けることができる。
ステップ1,2,3はどこからはじめてもOK、行きつ戻りつ進めていく。
下記の各ステップ例は学校名簿アプリケーションを想定
特にこれは書籍の図解のほうが分かりやすいです。
(参考)ソシオメディアさんWebの UIデザインパターン
オブジェクト指向UIは、単にナビゲーションのラベルを「名詞」にしたり、操作順序を「対象選択 → アクション選択」にするといった表現上のスタイルのことではなく、ユーザーの前に対象の理念をストレートに表象するということです。ユーザーに手順を指示するのではなく、目当てそのものを差し出す態度なのです。
とあるように、決まりきった手順で操作するのではなくユーザーが自由にUIを触れる感覚を持たせるようにする。
中身の話でないですが、レイアウトはきれいだったのですが文字が小さいところが残念ポイントでした。
なかなか会社のプロジェクトでこのレベルの設計面から携わる(口が出せる)機会はないのですが、設計する人 / デザイナー / エンジニアみんながこの思想や設計方法を理解していると、かなりスムーズに機能を絞れたり開発が進むような気がします。
読む前は正直ちょっと胡散臭い感じがしていましたが、ふだん触っているアプリ(Spotify や Uber Eats)もオブジェクト指向UIですし、その仕組みや設計の方法を学べたのでとてもよい機会になりました。
本で出される例に関して、例えばメールアプリ、メモ帳アプリ、アドレス管理アプリなどがありますが、どれも Apple の純正アプリと画面構成が同じでオブジェクト指向UIになっています。
HIGなどにも書かれているとは思いますが、Appleも社内で設計する際に同じような手法なのかなと感じました。
これから使うアプリやサービスを見るときもこの本で学んだ視点で見ることができるかなと思います。