メルペイ にてUXサービス開発に携わっている方(松薗さん、草野さん)の著書。
- 1人でも実践を小さく始めて続けられるように構成していること
- UXリサーチのリアルな実践事例を扱っていること
を特徴として掲げており、UXリサーチに関する理論的な背景や詳細な手法については、専門家向けの他書籍に譲っています。
「サービス作りのためにUXリサーチを実践し始め続けていきたい」という、わりとライトな層向けの書籍と捉えることができそうです。
この書籍では、「UXリサーチ」を
「様々な場面で起きる人の知覚や反応(UX)について調べて明らかにすること」
と定めている。
UXリサーチの対象は、UIを使っているときに限らず、人の生活そのもの、既存の他サービスなど多岐にわたる。
体験の品質が重視され、市場の変化が激しく、多様性が高い状況では、どういう人がどういう事情で使っているかをサービス提供者が推測する難易度が上がっている
背景からUXリサーチの重要性が増している。
UXリサーチをして明らかになったことがきちんと組織の関係者に伝わり、議論や意思決定に活用されることが重要です。
UXリサーチはあくまで目的のための手段のひとつであることを見失わないようにしましょう。
「最近入ったばかりのメンバーもいるし、みんなでユーザーのイメージをあわせてコミュニケーションを円滑にするために実際にユーザーの声を聞く機会を作りたい」といった具合に状況に合わせて目的と手段を考えるのがよい。
「ユーザーのことを理解したい」という気持ちを忘れずに、相手に興味と尊敬を持って接することを心がけていれば十分です。
「上司や同僚の理解がなくても始められる」については「UXリサーチ」という言葉を使わずに説明することがおすすめの手段。「デザインのヒントを得たい」などの目的とセットで、「その手段としてユーザーを理解したいので、何人かにお話を聞いてくる時間を業務中に取ります」などすると上司としても賛同しやすいのではないか。
「実はもう始めていたUXリサーチ」の例のように、普段からユーザー目線で考えることを1歩進めることで、「UXリサーチ」になり得る or つながることになる、というのは良い視点だと感じた。
全体を「UXリサーチの運用」と捉える。
大きく2つのパートに分けて考える。
1.状況理解
2.問い立案 3.手順設計
なぜやるのか、何を明らかにするのか、を明確にするパート。
状況を理解することで、自分たちが何が分かっていないのか、何を調べて明らかにするべきなのか考えやすくなる。
4.調査準備
5.調査実施
6.データ分析
何をどのように明らかにするのかを決めるパート。
どのような背景でこの事業がはじまっているか、リソース(ヒト・モノ・カネ)をどのくらい活用できるか、権限はどの程度持っているか or 必要か、等を状況理解で行う。
「状況理解」で把握した内容を加味して身の丈にあった「問い」を立てて関係者と合意する。
また身の丈に合わせるために「明らかにしないこと」も明確にしておく。
また、調査結果がどのようにプロジェクトで活用されていくのかを明確にイメージすること、を考えるのが効果的。
だいたい以前読んだユーザビリティエンジニアリング(第2版)と同じ内容の掲載。
この書籍の目的に書かれている通り、手法を細かく記しているわけではないので、ユーザビリティエンジニアリングの方が詳しい。
なぜUXリサーチという手段を用いると良いのかを引き込みたい相手の視点から語る とよい。
関係者が「目的を達成できそうな手段だから使ってみたい」と思われればよい。
主体的に継続してくれる仲間が増えることは、長い目で見れば組織でUXリサーチを活用できる機会が広がる。
UXリサーチを活用して、ユーザーとともに価値のあるサービスを作っていく文化を根付かせることを考える。
このあたり難しいなあと感じます。
案件でなかなかUXリサーチ何かしらやってます、という話はそこまで多く聞かないので、それこそこの本で書かれているようにスモールスタートでやっていくことが必要なのかなと思いました。
UXリサーチの運用を単に効率化するだけでなく、標準化して品質を保つことや仕組み化していくこと。
ResearchOps Community というコミュニティもある。
ResearchOpsには6つの要素がある。
概念的には他のOpsと同じ感じですが、文化的な雰囲気がします。
Dovetail というもの始めて知りましたが、こういう感じで分析できるの楽しそうですね。
私の愛するリサーチツール「Dovetail」について語らせてください|mihozono|note
筆者がメルペイで行ってきたUXリサーチのプロジェクト事例
これまでの始め方、組み立て方、手法を踏まえて実際にはどのように行ったかが記されている。
ひとつのプロジェクトの粒度や、具体的にどのタイミングでどのようなことをしているのかが分かりやすかった。
改めて、なぜUXをやる必要があるのかを考えるきっかけになった気がします。
個人的には、流行りや必要に迫られての部分もありますが、これまで一方方向だった作ることから、一歩踏み出しして使う人の意見を聞いてみて、それをもとに作る、ということで何かしら気づきや自身の成長ができるのではないかな、という期待があるからだと思い起こしました。
ちょっと思い出したつながりで、オフィスで働いていたときは「これが使いやすいか、見えやすいか」みたいな話はすぐ近くの席の人に聞きやすかったり話してたが、今はそのような細かいところは自身の感覚や判断で過ごしてしまっているのではないかと反省。
共通言語でものを作れることや、良い or 悪いの基準や感覚が揃っていることは、とても大事と思っているのでそのあたり見直しながら仕事をしたいなと思いました。